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古くても新しくてもいい音楽

【0005】NUSRAT FATEH ALI KHAN ~ カッワーリの大御所

2013-04-23

∥ARTIST: NUSRAT FATEH ALI KHAN
∥ALBUM TITLE: LOAY LOAY AAJA MAHI

 

ヌスラット・ファティ・アリ・ハーンは、イスラムの神秘主義に根ざした集団歌謡で、音楽をとおしてアッラーとの合一をはかろうとする「カッワリー」という儀礼的な音楽の第一人者です。1997年に逝去しています。
このアルバムは、レコード屋で「アリ・ハーンのロック」というPOPがついて売っていたものです。カッワリーとロックはいかにも不似合いです。カッワリーはいわば宗教音楽に近いもので、実際アリ・ハーンのアルバムは、アッラーとの融合をめざすかのように朗々とカッワリーを唄いあげる、日本人にはちょっと退屈と感じられるようなものがほとんどなのです。

しかし宗教音楽や伝統音楽がロックやポップスに変化してゆくことはよくあることなので、カッワリーがロックになったからといって別段驚くことはありません。しかし、アラブ・イスラムの音楽は、私の意識の中では、もっともロックに結び付きにくい感じでした。
ロックと謳うだけあってか全般的にこのアルバムはノリがよい感じですが、聴いてみればそのとおり、シンセサイザーなどの近代楽器やドラムを使用し、カッワリーを8ビートで歌ったような感じです。本来のカッワリーにある重厚さや荘厳なイメージが取り払われ、軽調に仕上げられています。きっとアリ・ハーン本人も気軽に取り組んだのではないでしょうか。曲によっては一曲が何十分にも及ぶカッワリーを、リズミックに短くまとめていて、イスラム世界の音楽をはじめて聴くにはお薦めの一枚ですね。

(文中敬称略)

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