電車のなか、待ち合わせをする人たち、ときには路上を歩いている人、自転車を漕いでいる人でさえ、頭が45度前方に落ちています。
電車に乗ってざっと見渡すと、50~60%、立っている人も座っている人も、多いときは90%くらいの乗客が、コウベを前に垂れています。眠っているわけでも何かを拝んでいるわけでも祈っているわけでもありません。
なにをしているかというと、スマートフォンと呼ぶらしい携帯電話機やタブレットを弄っているわけですが、ほとんどの人が首をカクンと前に垂れている風景はとても奇妙です。
中には本や雑誌を読んでいる人もいますが最近の都内の電車では少数です。首が落ちている人のほとんどは携帯電話機ですね。本や雑誌だともう少し角度が違います。
それにみんな情報セキュリティーに対する意識が低いのか、画面を隠すこともせず、覗こうと思えば簡単に覗けます。最近は老眼の疑い(?)はあれど比較的視力のいい私には、メールを書いている人の画面を横目で見れば宛先のアドレスは丸見えだし、Facebookなんかのパスワード入力もバレバレです。みんな他人の目を気にせずよく平気で電車内でそんなことをしているなと思います。
でもほとんどはゲームのようですね。
以前から奇妙な光景だと思っていたら、News Week電子版にこんな記事が載りました。ちょっと引用します。
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「スマホに夢中で誰も銃に気付かなかった」
2013年10月9日(水)16時49分
ウィル・オレムス以下は、サンフランシスコ・クロニクル紙のビビアン・ホーの驚くべきリポート。
「サンフランシスコ市営鉄道に乗っていた男が、混雑した車内で45口径の拳銃を取り出した。男は銃を何度も出し、あちこちに向けた。周囲には多くの乗客がいたが、誰も男に反応しない。スマートフォンとタブレット端末に夢中で、学生の背中に男が発砲するまで銃に気づかなかった」 ・・・続く・・・
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とな。記事の中で、「しかしサンフランシスコ州検察官のジョージ・ガスコンは、『テクノロジーが問題を悪化させている』とクロニクル紙に語った。」とあるのですが、テクノロジーだけの問題でもないように思います。人間の意識・関心がどっかイカれてます。
また、ロイター通信も同事件の記事を配信しています。
http://jp.reuters.com/article/oddlyEnoughNews/idJPTYE99905O20131010
電車の中はもちろん、路上でもどこでも携帯電話機に夢中(?)で頭が下がっている人がいっぱいです。おかげでスマートフォン向けゲーム会社やSNS関連の会社の株は上がり、一部の人は大儲け。携帯電話機に夢中の人たちは彼らに頭を下げせっせと料金を払っているようにも見えます。
周りをまったく見ていないので、電車内が混んできても詰めようとしないし、背中のリュックが他人の迷惑になってもおかまいなし、路上で前方から人が歩いてきても避けようともしない(気づいていもいない)。こういう人たちはひったくりや通り魔に逢ったらひとたまりもないでしょうな。彼らにとっては街中のどこに居ても「周囲の風景」は存在せず、携帯電話機の世界に入り込んでいますから。
東京オリンピックで観光にやってきた外国人が道に迷っていても、みんな携帯電話機に夢中で知らんぷりになるのかもしれません。東京は財布を落としてもほぼ確実に戻ってくるとオリンピック招致のプレゼンでおもてなしだの親切だのとやったらたしいけど、実際の街の風景はこんなもんです。みんな前方45度で四角い画面に祈ってる。自室の中なら好きにすればよいが、街に出ても周りのことなんか無関心。
もっとも東京あたりでは、携帯電話機を弄っていなくても周りを見ていない人は多すぎますが、少なくとも自分だけは注意しようと思うこのごろです。東京でもクアラ・ルンプールでも、顔を上げて歩いているとよく外国人に道を訊かれるのでもう少し英語も練習しようかと思うこのごろ。