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健康 漫筆

睡眠の話 ~「グッスリ朝まで眠る術」などあり得るのか??

2013-09-26

めったに見ないテレビ番組も偶々目について見ることがありますが、『ためしてガッテン』の「ふぁ~極上の熟睡感!グッスリ朝まで眠る術」(2013年09月25日放送)というのを見ました。

◆ 番組の内容

ぐっすり眠れない人が日本に3000万人もいる。眠ってみても「古い脳」が覚醒したままなので深い眠りにならず、熟睡感がない細切れ睡眠になっている、というのがそのからくり。

そしてこの「古い脳」をきちっと眠らせ良質な睡眠を得るために「眠くなってから布団に入る」べし、とな。これでまず悪循環を断ち切り、リズムを修正していく、と。
そして熟睡感アップの秘策は、「睡眠日誌」と、古い脳を静める「筋弛緩(しかん)法」とな。
睡眠日誌によって得られた実質睡眠時間をもとに、起床時間から逆算して寝る時間を決める、とな。

◆ でもね~

ここまでで番組は終わっているのですが、ここまでなら睡眠マニア(?)なら既知のことかと思われます。
私も睡眠で大変な目に遭い、その間いろいろ調べてやってみたことでした。
睡眠データ(別稿鬱の数年07|鬱病が治る、というのはどういうことか?参照)は、いきがかり上今も続けています。

確かに、睡眠日誌で自分のベストな睡眠時間や眠りにつきやすい時間帯はだいた把握できます。
しかしこれは状況把握としてはいいけれど、現実の生活に当てはめてうまくやれるかは別の話だと思います。

◆ 例えばこんな人はどうすれば??

■例1 -
眠りにつきやすい時間が2時とわかったけれど、毎朝6時には起きて仕事に行かなければならず、帰りはいつも20時~22時、という多忙な人。
生活パターンがこうなので、睡眠日誌を一週間つけてみても2時就寝6時起床。起床時間の6時というのは快適に起きる時間ではなくて、起きなくてはならない時間。
眠りにつきやすい時間が2時というのは比較的遅い時間ですが、毎日22時くらいの帰宅だとそうなってしまうこともあるのではと思います。4時間程度という睡眠時間はたぶん、ほぼ必要最低ラインですが、十分ではないかもしれません。この睡眠で毎日これだけ活動するのは結構しんどいかもしれません。
でも朝6時にすっきり起きられないからといって、それ以上眠っているわけにもいきません。
つまり睡眠の問題ではなく、22時までかかる多忙な仕事のほうをどうにかしないとベスト睡眠時間すら把握できず、根本解決にならないでしょう。

■例2 -
睡眠時間のベストが9時間くらいとわかっている30代の人が、毎朝9時には出勤しなければいけないとします。
7時には起きるとして逆算すれば寝入るのは22時がベストということになります。ただ、計算通りに22時に寝付けません。22時って30代なら寝るには早い時間です。18時に退社してもまだ飲んでいる時間だったり。
それに18時退社とすれば寝付くまでに4時間。これだと自分の時間が少なくかえってストレスが溜まるかもしれません。
9時間というと少々ロングスリーパーの部類でしょうが、そういう体質に合った出勤時間を選んだりすることは現実世界では困難です。22時に寝付けないとすると、この人はやはり眠気を押して頑張る必要がでてくるでしょう。

ほか、残業が多い人、医者や看護師やパイロット、警備警察、マスコミといったような時間に不規則な職業の人、などは睡眠日誌をつけて実質何時間眠れているか把握し就寝時刻を決めてみても、その睡眠時間が体に適切でなかったら快適な睡眠にはならないだろうし身体を壊すことにもなります。
すると、この番組の提示案だけでは解決にはならないでしょう。
おそらく、ぐっすり眠れない3000万人のほとんどが、そんなふうにどこかで無理をしながらやっているのではないかと。

◆ 「グッスリ朝まで眠る術」などあり得ない?

現代生活が時間やある種の区切りで動いている以上、人は多少なりともこれに合わせる必要があるうえに日中のストレスが加わります。睡眠時間を把握するために簡単に休んだり、眠れないからといって簡単に辞めたりするわけにもいきません。そういう意味では、現代生活に合った「グッスリ朝まで眠る術」などはなくて、日中の活動も含めて全体的に見直さないと快適な睡眠はおろか体を壊す、ということになってしまうと思います。
また、紹介されていた筋弛緩法。
これだけで簡単に緩むほどのストレス状態ならばかなりマシなほうですが、そうでない例のほうが多いように思います。一見簡単そうですが、緩むというのは意外と難しいのです。肩が緩んだように思えても、口の中にまだ力が入っていたりとか、自分の内部感覚をよく観察できないといけません。ストレスが強い状態だとこの観察眼が弱っています。

現代のどんな環境でも最低4時間半ぐっすり眠ったうえで朝6時に快適に起きる方法、とか、9時間睡眠が必要な人が仕事や余暇を楽しめる生活パターン改善法、とか、すでに睡眠が乱れている場合に実生活を続けながら矯正する方法、などがあると良いのでしょうが、誰も教えてくれません。精神科や心療内科でもなかなか教えてくれません(少なくとも私が関わったところでは)。これらは、自分で調節するしかないと思います。番組は「睡眠日誌が快眠につながる」ような表現ですが、残念ながらそう簡単ではないでしょう。

この複雑な世の中で、快適な睡眠をとる方法があったら誰か教えてください!

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