まともな情報に触れよう

くらし 漫筆

「距離感」が変~最近みんな他人との物理的な距離がやたら狭くない?

2013-07-03

とくに東京などの大都市だけの話かもしれません。近いのです、距離が。
どこを歩いていても立っていても、「接触」が多い。やむなく触れてしまうわけではなく、こちらが周囲を見渡しつつ、ぶつからないように端を歩いていても、待ち合わせ場所で待つときに通行人の邪魔にならないようにと計算して壁際に立っていたとしても、なぜか通り過ぎる人や並んで立つ人座る人がやたらニアミスする、はては接触してくる、というようなことが多くて気になります。
ぶつかったら「すんません」とか「失礼」とか、言葉でなくてもちょっと頭を下げるとかあると思うのですが、それもないので、もしかしたらみんな他人に近づきすぎ、はては接触してしまっていることに気付いてないのかも、とも思います。実際、携帯電話機の画面を見ながら歩いている(この時点で非常識だが)人はたいていそうみたいです。画面に現れる世界に入りこんでいて、周りに自分以外の人がいる、ということをまるで意識していない。皇居ランナーもそう。彼らは走っているのでまともに当てられたら困ります。

あの、例の日本独特の満員電車は今はやむなしです。問題点が別ですから。
でも、普通に空いている電車のなかでも触れる、広い場所なんだからもう一歩離れて立ってもいいんでない、と思うようなときもあるし、スーパーのレジに並んでいれば後ろの人のカゴが私のケツに当たってきたり、街中や駅や店内など人が集まる場で歩くときもわざわざスレスレを通っていく、美術館で立って見ている時に後ろを通る人の持ち物が背中に触れる、などなど、"距離感覚が変"です。
接触(やその惧れ)が気にならないのでしょうか? 接触と言っても派手にぶつかるわけではないのでそれでいちいち怪我をする心配をしているわけではないけれど、ちょっと肘や肩が触れたり、鞄や持ち物が他人に触れていることに気を使わない人が多すぎるような気がします。

私は電車の中では立っていることが多いです。座ると、隣に座る男性の膝が自分の膝に触れて気味悪いし、肘や肩がちょこちょこ触れるのも心地よくないのです。そもそも日本はいろいろなモノの「造りが狭い」ので、電車のシートももう少しゆったりした幅だといいなと思うのは確かです。体格の大きい人には電車のシートは狭すぎて可哀そうとも思います。それは別問題として、隣が女性なら体格のせいもあるしがばっと足を開いて座る女性は少ないので膝が触れることはないですが、携帯電話を弄る肘(打鍵しているときはよく動く)やブランドバッグの角が触れたりして困ります。そんなとき私は体が触れているポイントにそっと手を滑らせてみますが、相手はなかなか気づいてくれません。

パーソナルスペースという概念があります。ずっと前から思ってはいたことですが私はこれが人より広いかもしれません。
仮にそうだとしても、接触するレベルになれば誰だって気づきそうなもんですが、他の人はそうでもないのでしょうか。私が気にしすぎなのか(多少神経質なのは否定しませんが)、もしかしたら私の立つ位置、歩く位置取りが良くないからか、と思って周りを観察してみると、別に私だけでなく、他の人同士もやはり近すぎる。近すぎるときに声を掛け合う人はまだいいほうですが、そうじゃない人たちは気にならないのだろうか、と訝ります。それに声をかけたからいい、というものでもない場合もありますが。
マナーとか道徳とかいう話でなくて、「感覚がちょっと変なのでは」と思うのです。

<><><><>

さてなぜだろう、と考えてみると、ひとつは単に配慮が足りないだけかもしれません。「他にも人がたくさんいる」という、特別ではないたったこれだけの気遣いです。携帯電話を弄るのも本や漫画を読むのもいいけれど、他人や周囲環境への気遣いをちょっとだけすればいいだけの話だと思うのですが、どうもそれがないようです。
座らんがために降りる人も待たずに接触し合いながら電車内になだれ込む人々の姿は、蟻の群れのようでぞっとします。
二つめは、「見ていない」と思います。歩いているときは普通行く先を見るわけですが、そこに人や物が在ることを見ていない。10メートル先に歩みの不自由なお年寄りがいるから少し自分のコースをずらそうとか、あるいは振り返って進むときに、まず後ろを見てからではなくて体が先に振り返るので後ろの人に当たってしまう、とか、ちゃんと見てから動けば問題ないわけです。
三つ目。これは少し高度ですが、相手の動きや位置を予測して動く、というようなことをしていないのだろうと思います。これにはもちろん「よく見る(遠くまで広く)」ことがまず前提です。サッカーやバスケットでは、自分と自分以外の9人なり21人の位置・動線・ボールとゴールを意識しながら、見て予測して裏に走りこんだり相手のコースを変えさせたり塞いだりする技術が必要なわけですが、ここまで意識しなくとも、ひとつ目で述べた配慮の延長で動けるといいのだろうと思います。

シンガポールやマレーシアのショッピングセンターなんかを歩いていると、こちらが向かう先から他人が歩いてきて接触しそうになるとお互いすぐ「sorry」と言います。接触してからでなくその前にです。つまりちゃんと周りを見ているわけですね。そういう気持ちよさが東京にはあんまりないようで、残念ですわ。

-くらし, 漫筆
-, , ,