予防的、健康保持を目的にした方法論としてはやはり「操体」の原理でいいと思うのです。
故障と治療について ~ 私的記録と治療に対する見解」で少し触れたように、「~にはこの食べ物がいい」とか「体を温めれば健康になる」とか「バナナで痩せる」とか「血圧が低いなら上げるべし」とかいう各論的・商業主義的な健康法ではなくて、これでいいと思うのです。
<操体とは?>
操体についてはあちこちに情報がでていますし治療家もたくさんいるようです(でも「整体」とか「カイロ」「鍼灸」などに比べてあまり知られていないうえ、治療家も玉石混交のように思いますが)。
それに私が専門的な話ができるわけではないので、ここでは多少の経験も含めて紹介する程度の話になりますが、体験として、いろいろな痛みや鬱に連関しての愁訴を患って思ったのは、結局全体のバランスが大事、ということです。操体の考え方を知ってよく納得できた、というわけです
詳しくは、というか考え方を知るには、原典として以下を読めばもう充分だと思います。
『万病を治せる妙療法―操体法』橋本敬三著(健康双書ワイド版)
『写真図解 操体法の実際』茂貫雅嵩 編著(健康双書ワイド版)
操体については以前からなんとなく知ってはいたのですが、整体のような治療法の一種? というくらいの認識でした。
でもその認識は違っていて、操体の考え方というのは包括的な医学なのですね。
『万病を治せる妙療法』という本のタイトルは著者自身も「面はゆい題名」と言っているくらいで、一見コマーシャリズムに溢れたタイトルになっているけれど、内容は違います。健康の原理、病気治療の考え方について包括的に語られていて、自分で健康を維持・管理するための方法論まで述べられています。
まず最も大切だと思うところを引用します。
「人間の健康状態は、呼吸、飲食、精神活動、身体運動の個人個人の行動と、環境との関連から成り立っています。いいかえれば、毎日の自分の生活が自分のからだをつくっているということです。しかも、呼吸、飲食、精神活動、身体運動は各個人の責任行動ですから、個人によってどうにでも変えられるし、その結果である健康にもまたいろいろとちがった状態が現れるということです」(『万病を治せる妙療法-操体法』橋本敬三著 より)。
呼吸(息)、飲食(食)、身体運動(動)、精神活動(想)のバランスが大切で、これに責任を持って取り組まないと体は崩れていく、というわけです。
でも実際には、バランスが取れている人の方が少ないでしょう。
<息・食・動・想のバランス>
*運動不足に食べ過ぎれば太る。
→これはわかりやすい例ですね。
*太ったからといって下手な運動をして身体を痛める。
→運動の仕方を間違うとたいへんです。個人に合ったやりかたを考えましょう。
*血圧が高いから下げるべし
→所謂「正常値」というのは個人差を考慮しておらず、正常値に収めればいいという
ものでもない。(とくに厚生省が定める類のもの、昨今の「メタボ」の基準だってあや
しいもんです(利権のにおいがします))
*緊張すると呼吸が浅くなる。
→私もとくに鬱のときはずっとこうでした。
例えば、呼吸が浅くなれば酸素が足りなくなり、脳が不活発になり食欲も落ちて
体重も落ちて動きも鈍くなる、と連鎖しそうです。
などなど、息・食・動・想のバランスが崩れている例はたくさんあります。
また、身心はおのずとバランスを保とうとするようにもできているようです。
以前仕事場で私より一回りくらい年上の人が、血圧が180以上になっていたのに気づかず仕事をしていた人がいました(しかも喫煙者)。
さすがに具合悪くなり病院に行って血圧を測ってあとで驚いたというわけですが、180以上(所謂「正常値」をはるかに超えている)になっても倒れなかったのは、そのとき何らかの理由で、体が血圧を上げることで血流を増やしバランスを取っていた可能性があります。
こんなふうに、身体は連動しているので、血圧だけ下げよう、体重だけ減らそう、とやってもあまり意味がないように思います。環境や生活まで含めた全体を見直さないといけません。
なかでも「想」=所謂ストレスと、環境がもたらす影響は意外と多方面で、その対処もかなり厄介だと思います。
そしてこれが体に及ぼす影響は大きいもので、困ってしまいます。
*胃や内臓がわけもなく痛む。
*首や背中や腰の、筋肉なのか筋なのか骨なのか、わけもなく痛くなる。
*皮膚疾患ができる。
*過食あるいは小食になる。
*呼吸が浅くなり、落ち着かなくなる。
*眠れなくなる。
などなど。
これらが器質的な疾患に発展することもあります。
でも、ストレスで腰が痛くなったからといって按摩をやっても根本的には解消しません。原因であるストレスをどうにかするべきだし、呼吸、運動も含めたすべてのバランスで診ることが必要です。
このストレスの影響が最も大きいのではないか、と個人的には感じます。
でもなぜかみんな、ここが痛ければこれがいい、といった健康法にとびついたりしていますが、おかしなことです。おかしいのですが、原因が「想」(ストレスや考え方)にあると気づける人も少ないのかもしれません。
<自分で主体的に治していく>
自分の身心、生活は結局自分で調整するしかないので、他の誰かが言っている流行りの健康法だけやったり健康食品を摂っても駄目なわけです。
ただ、仕事や家庭などの「環境」はすぐに変えられない場合が多いので、それに伴うストレスがある場合は対処が大変ですが、この点は私も良い術がわかりません。
操体の良いところは、これを以て自分で自分を治そうとすることができる、という点です。
たとえば癌になってしまったら手術は医者にやってもらうしかないですが、そういう状況ではなくて、日常的に抱えてきた愁訴や予防、健康増進に対して、自分で調整する方法が示されている、ということが良い点です。
運動生理に基いた体の動かし方などは、前掲の本に載っているので参照してみていただければよいですが、それほど難しくなく、誰にでもどこでもできます。
息・食・動・想そして環境のバランスは自分で自分を見直すことでしか取り組めないことなので、主体的に関わるべきなのは当然ですね。